夏のオトシゴ

ある日、クラスメイトから告白された一之瀬香奈。
クラスでは目立たない存在だった香奈にとって初めてできた彼氏です。

告白してきた山岡も目立たないタイプで、告白にはすごく勇気を振り絞ったのがうかがえます。
山岡の優しくて誠実そうなところが気になっていた香奈はその場で交際をはじめます。
交際を始めたと言っても互いに奥手なふたりです。
クラスの中で仲良く話すことすらできません。
今でこそもどかしい思いがしますが、自分が高校生だったころを思い返すと、
そんな感じだったかもしれません。

ふたりが話すのは人目につかない山の中の神社。
ここは二人だけの秘密の場所で、ふたりだけの時間。
ふたりともガツガツした感じは一切なく、ただ優しく時間が流れます。
こういうのって青春っていうんでしょうね。
このまま時が止まってしまえばという言葉はこういうもののためにあるという感じです。
しかし二人とも子供のままでもいられません。

いずれ進学や就職などの難関が待ち受けています。
もしかしたら二人は離れ離れになってしまうかもしれません。
もしそうなっても思い残すことがないようにと考えるのは自然な事です。
時間が流れるという恐怖が二人の距離を縮めていくのでしょうね。

ところが、ふたりだけの時間を引き裂くような事件が発生します。
この事件こそ「夏のオトシゴ」の原因となってしまう事件です。
事の発端はたわいもないことでした。
香奈が化粧ポーチを学校で落としてしまったのです。
女の子の化粧ポーチには大切なものがたくさん詰まっています。
地味な子であった香奈であっても例外ではありません。

これを拾った相手が不良だったのです。
不良は香奈の化粧ポーチを漁り、あるものを見つけ出します。
それは香奈にとっては絶対に秘密にしておきたかったもの。
山岡との大切なものだったのです。
不良から大切なものを取り返し、さらに口止めするために、
香奈が取った決断は非常なものでした。

一方で香奈が問題に巻き込まれたことを知らない山岡。
いつものようにあの神社で香奈を待ち続けます。
あまりに非情な出来事ですが、逆に山岡は知らない方がいいのかもしれません。

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